鑑賞日:February 25th, 2015
個人的評価:96点
参考情報
『ビフォア』シリーズなどのリチャード・リンクレイター監督がメガホンを取り、6歳の少年とその家族の12年にわたる軌跡をつづった人間ドラマ。主人公を演じた新星エラー・コルトレーンをはじめ、主要人物4人を同じ俳優が12年間演じ、それぞれの変遷の歴史を映し出す。主人公の母をパトリシア・アークエット、母と離婚しアラスカに行ってしまった父をイーサン・ホークが熱演。お互いに変化や成長を遂げた家族の喜怒哀楽を刻み付けた壮大な歴史に息をのむ。(©シネマトゥデイ)
ストーリー
メイソン(エラー・コルトレーン)は、母オリヴィア(パトリシア・アークエット)と姉サマンサ(ローレライ・リンクレイター)とテキサス州の小さな町で生活していた。彼が6歳のとき、母は子供たちの反対を押し切って祖母が住むヒューストンへの引っ越しを決める。さらに彼らの転居先に、離婚してアラスカに行っていた父(イーサン・ホーク)が1年半ぶりに突然現れ…(©シネマトゥデイ)
感想
第87回アカデミー賞®では主要6部門にノミネートされ、パトリシア・アークエットが助演女優賞を受賞した事で今まさに話題となっている作品。映画史上初と言われる壮大なチャレンジの末に完成した芸術的な傑作。こんな映画は観た事がないし、生きている内にこの様な映画に再び出会うことは無いかもしれない。
本レビューでは特に印象に残った以下の3ポイントを紹介します。
- 12年の歳月が生み出した究極のリアリティ
- 映画の常識をぶち壊す勇気
- 見終わった後に見える「大人」の世界
12年の歳月が生み出した究極のリアリティ
本当にこの家族が存在し、こういう生活を送っていると信じこんでしまうほどリアリティが追求されていた。
リチャード・リンクレイター監督は舞台ともなっているヒューストンの出身である事もあり、地元に住む家族の生活を生々しいほど現実的に描く事に成功している。
映画の常識をぶち壊す勇気
本作を0点と評価する人がいても自分は驚かない。
だって3時間近くの上映時間内で何も特別な出来事が起きないのです。
リアルを追求したからこそ、映画ならではの劇的な展開が全くない。
12年もかけた大作なのに、あくまでも尖った内容で攻め続けた製作陣は本当に凄い。
0点をつけられても構わないから、自分が作りたい作品を完成させるという強い思いと勇気があったからこそ、映画史に名を残す作品が出来上がったと思う。
観終わった後に見える「大人」の世界
両親のマジケンカを目撃したり、反抗期に親へとぶつかったり。友達とエロサイトを開いたり、お酒をコッソリと飲みながら男友達と下ネタを得意げに話したり。彼女が出来たり、フラれたり。誕生日や卒業日に家族みんなに祝ってもらったり。
集中して見る必要のない何でもない展開が約3時間も続く事により、観ている人達はきっと自分の子ども時代を振り返ってしまうだろう。恐らくほとんどの人が時間をかけて真剣に自らの人生を思い返したはずだ。
自分のアイデンティティがどういう人達に囲まれて、そしてどういう出来事の重なりにより形成されたのかが何となく見えてくる。
そして周りの人がどういう気持ちで子どもであった自分と向き合ってくれていたのかという点にも気づく事でしょう。
子ども時代の自分を客観的に見つめなおす事により、観終わった後には本当の大人になれた気がした。見えてくる世界も少し変わったと思います。そういう意味で、人として成長させてくれる作品です。
人は死ぬ直前に自らの人生を走馬灯のように駆け巡ると言われているが、この作品を見ている時はそれと同じ様な状態になると思う。この体験は言葉ではこれ以上表せないので、是非劇場で観てほしい。
0点か100点で評価が完全に分かれるタイプなのでハズレと感じる人もいるかもしれないが、騙されたと思って一度観てみてください。すぐに分からなくとも、いつかこの映画を観て良かったと感じるはず。
死ぬ前にまた見返したい作品が増えました。
「Boyhood」の後を描いた続編の噂もありますが、それも楽しみです。
映画史上初と言われる壮大なチャレンジの末に完成した芸術的な傑作。こんな映画は観た事がない。超オススメです。 【洋画レビュー】『6才のボクが、大人になるまで』(Boyhood)#6才のボク http://t.co/4pKSiI4oTA pic.twitter.com/j53rHiJlrR
— 落合弘幸 Hiroyuki Ochiai (@Hiroyukiochiai) 2015, 2月 26
なお、主人公が祖父母の家に遊びに行った時に大型犬がシッポを振って出迎えてくれるシーンがありますが、それ以外でワンちゃんは登場しませんでした。