鑑賞日:December 26th, 2015
個人的評価:85点
参考情報
『マイ・ブラザー』などのトビー・マグワイアが実在の天才チェスプレイヤー、故ボビー・フィッシャーを怪演した白熱の心理ドラマ。米ソの冷戦時代、盤上での代理戦争を死にものぐるいで戦ったアメリカの奇才対ソ連チャンピオンの手に汗握る対戦を活写する。貫録ある世紀のライバルを『ラスト・デイズ・オン・マーズ』などのリーヴ・シュレイバーが熱演。変わり者の奇才の波瀾万丈の人生と、緊張感あふれる頭脳戦に手に汗握る。
ストーリー
1972年、アイスランドで行われたチェス世界選手権で、ボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)とボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)が対戦する。長きにわたりソ連がタイトルを持ち続けてきたが、史上初のアメリカ人挑戦者が誕生。若き天才の登場に世界中が注目する中、ボビーは第2局に出現することなく不戦敗となり…
感想&見どころ
まさに国の威信をかけた盤上の戦い。手に汗握る対局シーンではつい何度も唾を飲んでしまう。この狂気に満ちた命がけのバトルは対局開始前から既に始まっており、色んな意味で世界最高のチェスマッチが楽しめる作品。
極限の対決が生み出した神の一手
「世界が震えた神の一手」というコピーがポスターや予告編で使われているが、この究極の一手がどのようにして生まれたかが多くの時間をかけて描かれている。
世界が注目している一戦なのに、「テレビカメラが無い部屋でしか対局はしない」など無茶な要求を出し続けるボビー。彼が持つこの傲慢さは同時に彼の弱さをも映し出しているようにも思えるが、全ての言動の末に生まれたのが神の一手であるという風にも捉えられる。
これは果てしなく計算された一手だったのか?それとも天才同士の対局によって生まれた偶然の産物なのか。。僕は「言い訳にしか聞こえないボビーのあり得ない要求の裏に隠された一手!」と感じた。
神の領域にいるからこそ見える世界
僕の好きな作品で、同じく天才を思考を描いたヒッチコックもそうだったけど、やはり天才にしか見えない世界があると今回も感じさせられた。この世界を巻き込んだ世紀の一局を通して、ボビーには全てが見えてしまったのだろう。その結果が自国との決裂であり、きっとその後の亡命にも繋がった。精神的な病を持ったと認定される人と国家が恐れる驚異の天才は紙一重だと改めて認識させられる。ヒッチコックとボビーの違いは、支えてくれている人々と本人との関係性。
(C) 2014 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. Photo Credit: Tony Rivetti Jr. |
アンチヒーローと彼の取り巻く人々
彼を取り巻く人々の狙いは一体何だったのか。ブルックリン育ちの青年がソ連という一国を打ち倒す構図が見たいがために周りの人々はボビーをサポートしたのだろうか。アメリカ大統領までもが関心を示す盤上の戦いは、本当に国の威信だけを賭けたものだったのか。それよりも大きい何かが裏で動いているようにも感じたが真相は誰にも分からないのだろう。唯一ハッキリしている事はボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーの両方が、それぞれが代表した国のPawnだったという事。そして彼らのPawn(ポーンというチェスの駒)としての人生は国のために犠牲になる事で幕を閉じる。「Pawn Sacrifice」という原題に隠された意味はこれ以上分からないが、ぜひ日本語タイトルも変えてほしくないほど深いメッセージが詰まっているね。
(C) 2014 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. Photo Credit: Tony Rivetti Jr. |
※以下の作品を購入するにはiTunesのアメリカアカウントが必要です
(※フォローかリツイートして頂けると喜びます!)
残念ながら犬は一切出てこない。
盤上の第3次世界大戦!?狂気に満ちたバトルは対局開始前から始まっており、色んな意味で世界最高のチェスマッチ!
【洋画レビュー】『完全なるチェックメイト』(Pawn Sacrifice) https://t.co/WZCrL0IxfT pic.twitter.com/YoIxNNOqjF
— 落合弘幸 Hiroyuki Ochiai (@Hiroyukiochiai) 2015, 12月 25
0 件のコメント:
コメントを投稿